セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
デコピンを食らった私は、別に痛くもないその額を両手で押さえながらオーバーなリアクションをとった。そんな私のことをふっと鼻で笑った難波は「せやな」と言ったあとまた再び口を開いた。
「ええ感じやん。やっぱり似合うてる」
優しく笑ってそう言う難波に、私は少しばかり驚いた。確かに他に言うことがあるだろうと言ったけれど、そんな風に真っ直ぐ褒められるとは思っていなかったのだ。
「……ありがとう」
なんだか少し照れくさく感じた私は、少しだけ俯き加減で呟くように返事を返した。
「あ、秋加。一久は? 一久にもお礼言うとかんと」
「あー、黒崎なら今お客さんにつかまってる。多分長くなるだろうし、私から伝えとくよ」
「悪いな。ほな、頼むわ。また改めて礼させて。こいつが結婚できたらやけど」
秋加と話していた難波が一瞬、私の方を見た。
「え⁉︎」
「あー、いいね、それ。待ってるわ。明菜ちゃん、早く結婚してね」
「は⁉︎」
状況を理解しきっていない私をよそに淡々と話を進めていく二人。
これは、私が早く結婚しないと秋加と一久さんに何のお礼もできないということか。そう理解した私は、更に結婚への気負いが増した。
今回お世話になった二人のためにも、何としてでも勝ち組へのし上がり、素敵な結婚をしなければと心に誓った。