セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

「安井さん、めっちゃ可愛いじゃないですかぁ!メイクも変えたんですね!前は綺麗で格好良かったけど、今回は綺麗さと可愛いさ兼ね備えてますね!」

「ええ、ほんまに?」

「ほんまです!ほんまです!」

「でも、あの辺りには不評やってん」

 松井ちゃんの勢いにおされたのか、それとも単に仕事に戻らなければいけないと我に返ったのか、気がつけば私の周りから人は去り始めていた。私は、私に背を向けて去っていく中の二人の女の子に視線を向けながら松井ちゃんに言った。

「前の方が好き、とか、前の方が綺麗で素敵やったって言うてた」

 前の方が良かったんかなあ、と言って私が眉を下げる。そうすると、松井ちゃんは目を三日月型にして笑った。

「そんなん気にしたらダメですよ!きっと、安井さんが可愛いくなったから嫉妬してるんですよ。ほら、綺麗でかっこいい女の人って同性に好かれるけど異性にはあんまり好かれないじゃないですか!逆に、可愛い女の子は異性には好かれるけど同性には好かれないでしょう? 私も今の安井さんと同じく後者なんで」

 えへへ、と松井ちゃんが笑う。

 自分が可愛い系で異性に好かれているという自覚があるあたりは流石だと思ったけれど、確かに、松井ちゃんは可愛い。可愛いが故に妬まれることもあるのだろう。

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