セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

 私の言葉を聞いて、明らさまに肩を落とした松井ちゃんの頬に、ぷくっと空気が溜まった。

「確かに安井さんは29歳やけど、綺麗じゃないですか!私は、綺麗やったら年齢とか関係ないと思うんですけど」

 こういう後輩からのフォローのような言葉は、この年齢になると虚しくて、余計に惨めにもなる。下手したら嫌味にさえ聞こえてくるものだから、老い、というものは本当に怖いと思う。

 ただ、松井ちゃんに関しては、本当に純粋にそう言ってくれているという事が分かっているから、これだけは素直に受け止めよう。

「ありがとう。でもね、私が参加しなあかんのは、もう既に合コンやなくて婚活の方やからね。ちょっと違う戦場で頑張ろうかと思ってんの。だから、今日の合コンは若い子誘ってあげて?」

「……はあい。分かりました」

 どうやら本当にショックを受けているような松井ちゃんは、つまらなそうに返事をしてトボトボと背中を丸めて私の元から去っていった。

 合コンの誘いは有難い。さすがにこの歳では合コンの誘いすら稀にしかこないから。だけど、この歳での合コンは痛いし、それに、私は「結婚」というゴールテープを共に切れる人を探しているわけで。……となると、私の行くべき戦場は合コンではなく婚活である。

 いや、そもそも、私がこの歳で結婚出来ていない原因というのは彼氏が出来た後だ。出会いの場に足を運んで彼氏が出来たとしても、その先。パートナーに「結婚したい」と思わせられないのが原因なのだから、出会いの場より何よりその先の改善が最優先。

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