セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
そして、あっという間にやって来た、早川くんとご飯をする時間。
仕事を定時で切り上げた私と早川くんは会社の前で待ち合わせ、少し歩いたところにある小洒落た居酒屋へと入った。
「そういえば、安井さんって難波さんと付き合ってるんですか?」
「えっ⁉︎」
お酒を飲みながら、おつまみを食べ進め、仕事の話だったりお互いの話をする。そんな中で、早川くんが突然そんなことを言い出したものだから、私は口の中に含んでいたお酒を吐き出しそうになった。
「なんでそうなるん?」
「え、いや、だってすごい仲良いじゃないですか。ほら、最近お弁当も作ってきてあげてるんですよね」
「えっ?」
「え? 昨日とか一昨日、安井さんのお弁当を難波さんが食べてるとこ見たんですけど……」
くるりと目を丸くして首を傾げている早川くんは、どうやら勘違いをしているみたいだった。
私は、まだまだ下手くそな料理の腕前でお弁当を作り、そのおかずを毎日難波に毒味させている。それを、どうやら彼は、私が難波にお弁当を作ってきてあげていると勘違いしたのだろう。
「違うよ、早川くん。あれ、作ってきてあげてるんじゃなくて毒味させてるの」