セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

「え、毒味?」

 早川くんの瞳がまた更に丸くなった。毒味という言葉に驚いてしまったようだ。

「私ね、料理苦手なんだ。だけど、料理出来なきゃいけないって言われたから仕方なく作ってきて難波に味見してもらってるの」

 毒味という言葉でまた勘違いをさせないよう、私はしっかりと事の理由を説明した。すると、早川くんは、ああ、といったような表情をして口を開いた。

「なるほど。そういう事だったんですね。でも、安井さんが料理出来ないのは少し意外ですね」

「そう? 私料理は本当出来ないんだ。皆良い風に見てくれるけど、ほんまはダメダメ女」

「そうですか? 確かに前の綺麗なイメージからだと、すごい完璧な女性に見えました。今もそうですけどね。でも、実際仕事出来るし、優しいし、全然ダメじゃないですよ。それに、料理出来なくても、ちゃんとしようとしてるのが男としてはグッときます」

「そうかな。ありがとう」

 優しくフォローを入れてくれる早川くんにお礼を言い、私はお酒を喉の奥に流し込んだ。

 そして、ふと、今頃松井ちゃんと難波はいつもの居酒屋でうまくやっているのだろうかと考えた。

「僕、前から安井さんいいなって思ってたんですよね」

「えっ?」

 ぼんやりと浮かんでいた、松井ちゃんと難波の姿。それが、早川くんが発した言葉により消えていった。

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