セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
「安井さんと仲良くなりたいって思ってたんです。ずっと。だから、今日こうしてご飯食べれてるのが奇跡みたいです」
「そうやったんや……そんなん、全然知らんかった」
「今日まだ少し話しただけですけど、やっぱり想像通り素敵な人で。だから、できる事ならもっと安井さんに近づきたいです」
「えっ?」
私の思考が、一瞬止まった。
早川くんの真っ直ぐな言葉と、瞳と、表情。その全てが、逸らそうとした私の視線を逃さなかった。
「てっきり難波さんと付き合ってるのかなと思ってて動かなかったんですけど、そうじゃないなら、チャンス、ありますよね?」
「えっ……は、早川くん?」
理解しようにも理解しきれない。
早川くんの言った言葉を何度となく頭の中でリピートして、その言葉の意味を並べていく。
もう、既に私の思考回路はショート寸前だった。
「まぁ、そういう事なんで、これからはどんどんアタックします。よろしくお願いします」
ぺこり、と座ったままで頭を下げた早川くん。この時、早川くんの言葉たちをやっと理解する事ができた。
「えっ? ええーーーーっ⁉︎」
周りを気にすることなく、出て来てしまった腹の底からの声。それは、大きく店内に響き渡った────。