セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

 その最優先事項である私の改善点を改善するための良い方法。難波がそれを思いついたらしく、退社後の19時頃、私達は二人行きつけの居酒屋にいた。

「良い方法って、なに?」

「名付けて、安井明菜の安売り大作戦や」

 私の問いに、一度にやりと口角を上げた難波がそう言ってドヤ顔を披露した。

「私の安売り大作戦?」

「そう。『安井(ヤスイ)』だけにな」

「いやいや、全然うまないし、つまらんし、それ、どうせろくな作戦ちゃうやん。やめて」

 全然面白くないダジャレとドヤ顔を披露した難波が発案した作戦は、内容を聞かなくても、ろくでもない作戦だと思った。そう思わずにはいられなかった。しかし。

「こんの、大バカ者め。難波様をなめるなよ? これ、実践したらなあ、お前下手したら一ヶ月で結婚出来るかも分からんで。俺が言うんやから間違いないわ」

「……難波が言うと、なんでこんなに説得力を感じへんのやろ」

 自信満々な表情で、私に、その安売り大作戦とやらを推し勧める難波だけれど、彼は、こう見えても一度結婚を失敗している男だ。

 私と同い年であり、この会社へ入社した時期も同じである同期の彼は、四年前。25歳の頃に一度結婚をしている。だが、その二年後、27歳で離婚。離婚することになった理由は詳しく聞いていないけれど、難波は「俺が悪いねん」と何度となく言っていたのを覚えている。

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