セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

 
「どうやってん」

 早川くんとのご飯から数日が経った頃、ばったりと廊下で難波と鉢合わせた私に、難波がそう問いかけた。

「それなりに上手くいったで。なんか、これからアタックするって宣言された」

「なんや、えらい上手いこといってるやん」

「まあね。そっちは?」

「ああ、まあ、ええ感じやで。絵梨奈ちゃん、ええ子やったし」

「うん。そうやんね。松井ちゃんはええ子やな」

 ああ、やっぱり上手く行ったんや。っていうか、松井ちゃんのこと絵梨奈ちゃん呼びなんや。なんて、実際には言わないけれど、私は少しだけ、そう、つまらなく思ってしまった。


「まあ、お互い頑張ろな」

「うん。頑張ろ」

「ほな、仕事戻るわ」

「うん」


 なんとなく、〝またね〟とは言わなかった。言えなかった。

 少し気が早いけれど、もう、難波は松井ちゃんのもの。そんな感じがしてしまった。私はもう、これ以上必要以上に難波と一緒にいない方がいいのかもしれない。そう、思ってしまったから。


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