セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
秋加が、自分の涙や気持ちを押し込めるかのようにビールを一気飲みした。
「恋する気持ちだけじゃあ、結婚するには軽すぎるんだよね。結婚に何が大事かって、結局のところは、安心とか安定とか、それこそ、この間言ったみたいに、自分の弱さが見せられるだとか。そういうところに知らず知らずの間にある愛が大事なんだよ。私と彼のいた場所には、その愛が無かった。私も、彼も、好きだからこそ気を張りすぎてた部分もあったから」
私は恋をしていただけ。あの人は、一緒にゴールテープを切る人じゃない。私の人生の通過地点でしかない。
そう、秋加が自分に言い聞かせるようにしているのを見て、私は結婚がいかに自分の人生にとって大事で、いかに難しいものかを思い知った。
「明菜ちゃんも、ちゃんと結婚のことは真剣に考えた方がいいよ。恋をしたから、好きだから、彼と結婚する。なんて考えが甘い。この歳になれば分かるよね」
秋加の言うことは何となく分かった。だから、私は小さく一度だけ頷いた。
「結婚って、難しい」
ぼそりと私が呟く。すると、秋加はさっきまでとはまるで違う吹っ切れたような表情をして「その髪型やメイクの効果はどうなの?」と私に尋ねた。