セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
「お前なあ……また人の傷をえぐるようなことを」
「だって、ほんまのことやん」
「だからってなあ……まあ、ええわ。俺はそんな話がしたいんちゃうねん。とっとと本題入んで」
「はいはい。どーぞ」
私は枝豆をつまみ、なにも期待することはなく適当に返事をした。テーブルの向かい側に腰掛けている難波はビールジョッキを口元へ運び、それをぐびぐびと喉の奥へ流し込んだ後すぐに口を開いた。
「まず、安井。お前、男が彼女にしたいなあ思う女と、結婚したいと思う女。この違い分かるか?」
「そんなん、知るわけないやん。知ってたら多分もう結婚出来てる」
「ああ……せやな。間違いない。これは質問するまでもなかったわ。悪い」
「ちょっと、なんなん。そんな事ないって、とか言うてフォローしてや」
「まず、彼女にしたい女は……」
「あ、無視なん。無視するんや。へえ、まあ、別にええけど」
フォローをしろという私の話などなかった事にして話を進めていく難波。私はとりあえずそれに対しての言葉を独り言のように発しながら再び枝豆を口に運んだ。
「彼女にしたい女はな、正直、外見重視や。中身が良かったら、そりゃあその方がええけど、彼女っていう段階なら全然外見だけでもええねん。まあ、所謂アクセサリー的な感覚っちゅーたら分かりやすいやろか。とにかく、ひとまず隣に置くなら美人のがええってこと」