セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
私は、最低だ。
難波の幸せを誰よりも願わないといけないし、願ってもいる。それなのに、難波がいざ松井ちゃんとの幸せを掴もうとしているこの瞬間に、結婚して欲しくないだなんて、本当に、酷い女だ。
この醜い感情が嫌だった。消したかった。だけど、難波と松井ちゃんが一緒にいるところを見るたび、そんな醜い感情はふつふつと大きくなっていった。
難波に幸せになってほしいという気持ちはあるはずなのに、どうも、私の感情は矛盾している。
「安井さん、あの、ちょっといいですか」
「あ、うん。なに?」
一人、リフレッシュルームにいた私の向かいの席に腰をかけたのは、松井ちゃん。私は、いつもと変わらない態度で松井ちゃんに返事を返した。
「あの、難波さんの事なんですけど……」
「うん」
なんとなく、難波の話だろうという事は予想できていた。あの、松井ちゃんの口から、難波と付き合っているという報告を受けた日。あの日以来、私は時々相談に乗ったりしていたのだ。
「難波さん、全然手出してくれないんですよぉ」
「手?」
「ほら、私たちもうすぐで付き合って一ヶ月経ちそうなんですけど、それなのにまだキスもしてないんです!」