3月20日



『3年2組、香月 櫻!』


「はいっ!」


出来るだけ、普通の声で、大きく。


そう思っていたけれど、
やっぱり少し裏返ってしまった。


目の前では校長先生が、


「卒業おめでとう」


と言いながら卒業証書を持っている。


「ありがとうございます」


私は頭を下げながら、それを受け取る。


回れ右をして、体育館のステージから
体育館を見渡す。


涙を流す仲間達。


お世話になった先生。


難しい年頃の私と向き合ってくれた両親。


全部、全部、目に焼き付けておきたい、
そう思った。


熱いものがこみ上げてきて、


でも席に着くまでは頑張ろうと思って、


何とか耐えた。


席に着くと、隣には目を潤ませている
夏木がいた。


「櫻っ…」


「んっ…?」


「せーので泣こ」


「何それー」


そう言った時、もう夏木は泣いていて、
私も涙が溢れていた。


その後私達は校歌を歌った。


大好きな中学校。


大好きな友達、仲間。


大好きな先生達。


大好きな家族。


大好きな…恋人。


沢山の人達に支えられて、
私達はこんなにも成長したんだね。


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