そして目覚めの口づけを
平日に処理しきれなかった洗濯物を洗ったり部屋の掃除をしたり、作りおきのおかずをこしらえたり新作の構想を練ったりして過ごしましょうっと。

貴志さんの方はどうするつもりなのかちょっと分からないけど。

ま、お互いに好きなように時間を使えば良いだけだ。

3月の半ば過ぎという事はつまり、私がこのマンションに転がり込んでから早3ヶ月が経とうとしている訳で。

しかし以前に予想した通り、貴志さんとの共同生活はすこぶる順調に進んでいた。

いや、実は日に日に、彼と接する際のてんやわんや、てんてこ舞いっぷりは拡大して来ているのだけれど。

それは私の気持ちの問題で、そして必死に胸の奥底に押し込めているので表面的には何ら波風は立っていない。

他人をだまくらかすことにかけては、アカデミー賞レベルの演技力だものね、私…。

そんな風に自虐的に考えながら身なりを整え、朝食を終えて必要な家事を済ませてから恒例のサイト訪問を行う事にした。

休憩も兼ねる為、お茶とお菓子の用意をしようと再びリビングダイニングキッチンへと足を踏み入れた私はドキリとする。

あらかじめ割り当ててあった掃除当番の任務を果たすべく、貴志さんが専用のシート付きスティックで床をふきふきしていたのだけれど、彼にとっての三種の神器が揃っていなかったからだ。
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