ハッピーエンドなんていらない
「彩芽早いね、おはよう!」
ダーッと走ってきて、思い切りわたしに抱きつ紫苑の頭を優しく撫でる。
「まあね」
自慢げにそう言うと、「いつもは遅いくせに」と笑っていた。
「今日もビリは雪か」
へらっと笑う湊に、そうみたいと笑いかけた。
わたしから離れた紫苑は、そんな湊に駆け寄って腕を絡めた。
頬を染めて幸せそうに笑う2人。
スカートをぎゅっと掴んでから、やっぱりパッと離した。
…そうだ、わたしは、2人を悲しませないために雪と付き合うんだから。
些細なことで嫉妬ばかりしていちゃあいけないだろう。
「今日はちょっと早く来たよ」
満足げに笑って胸を張る雪に、紫苑が「どこがっ」と言って肩を軽く叩いた。
…まあ、確かに今日はわたしも雪もいつもより早かった。
それは紫苑たちには少しの差かもしれないけれど、わたしたちにとっては大した差なのだ。
「今日は、ちょっと2人に報告したいことがあって」
だって、それは、2人に報告をするために時間だから。