ハッピーエンドなんていらない
雪の改まった声に、2人が歩き始めようとするのをピタリとやめた。
わたしはそんな雪のすぐ横に立って2人を見る。
ふと勘付いた2人の表情がそれぞれ変わって、
「実はおれたち、付き合うことになったんだ」
懐かしい、湊とまったく同じようなセリフを吐いた。
本人はきっと合わせたつもりはないだろう。
けれどあまりに衝撃すぎて印象に残ったあの言葉と、まったくもっておんなじだった。
そうだ、そういえば、あの日もこうして2人がわたしたちに報告があると言って。
付き合うことになったと湊が言って。
まるでわたしではないような、そんな冷めた声でおめでとうと言ったんだ。
「お、ついにか!おめでとう!」
湊がケラケラと笑いながらお祝いの言葉を投げかけてくる。
だけど紫苑は、しばらくわたしをぼうっと見つめたあと、
「ほんと、おめでとう」
紫苑らしくない、大人びた声でそう言った。