ハッピーエンドなんていらない
真剣な目つきで黒板を見つめる紫苑に、思わずクスッと笑みをこぼす。
穴でもあきそうなくらいにジッと見つめていて、少し、追いついてないようだ。
…紫苑がいるから、わたしは湊とは幸せになれない。
…この言い方だと紫苑が悪いみたいだけど、悪いのは断然わたしだ。
ハッピーエンドなんていらない、わたしには、湊と結ばれるエンドはいらない。
湊と結ばれるヒロインは、きっと紫苑で十分だから。
わたしは、そんなヒロインの親友ポジ。
たまに、わたしが先に伝えてればなんて思ったりもした。
けれど、はじめに伝える勇気が出なくて伝えなかったのはわたしなんだ。
小さな頃から一緒にいて、ずっとずっと湊を想ってきたから、そのうちに消えちゃったんだ。
湊に想いを伝える勇気が、消えちゃったんだ。
視線をそらして、ノートの方を見る。
おいてかれちゃあまずいなと、慌てて黒板の文字をうつしていった。