ハッピーエンドなんていらない
時間が流れるのは早いもので、雪と付き合ってから2週間ほどが過ぎていた。
12月、冬と言える季節の真っ只中、もうすぐ冬休みを迎えようとする。
ただ、雪と付き合っているくせに、湊への想いが消えないままだ。
一つ一つ想いを消していくたびに、消えるどころか薄く広がっていく。
染み付いていく白に、わたしがまた苦しむことを知っているのに。
雪と付き合って、湊と紫苑の幸せを願いながらこうして離れずにいるのは、手放せない幸せがあるから。
湊と幼馴染として笑い合える幸せ。
それがたとえ本当の幸せじゃなくて、見せかけであったとしても。
「彩芽、ぼーっとしすぎ」
帰り道、そう言ってサラッとわたしの手をとる雪。
寒くてかじかむ手を、優しく包んでくれるけれど、
「…雪の手、冷たい」
包んでくれる手があまりにも冷たくて、苦笑いをした。
雪と手を繋ぐのにはもう慣れた。
たわいない話をしながら、恋人みたいに仲良く歩くことにも、慣れた。
でも、その日は少し違って。