ハッピーエンドなんていらない
「彩芽、授業中に湊のことばかり見てるよね」
貫くような言葉に、ドクリと心臓が嫌な音を立てた。
バレていないわけはなかったけれど、こうして指摘されてしまうとは。
「…そう、かな…」
誤魔化してそんなことないと言ってみるけど、雪はそうだよと断定した。
ギュッと力の込められる手に、ドクドクと心臓の音が大きくなっていく。
だけど雪は怒ることもなくニコリとわたしに笑いかけると、
「だから、おれのことも見てほしいなって」
照れくさそうにそんなセリフを吐いた。
思わずキュンとする一言に、サッと目をそらしてしまった。
付き合ってから雪を意識することもしばしばあったけど、キュンとしたのは初めてかもしれない。
あっても格好いいくらいにしか思わなかったけれど、今回は胸がドキドキした。
「み、見てるよ…」
ふいっとそっぽを向くと、
「そうかな」
雪は疑うようにそう言った。