ハッピーエンドなんていらない
雪とわたしではわたしの家のほうが遠くて、途中で曲がるから別れるのだけど、今日は違った。
「やっぱさ、日が落ちるの早くなってきて、この時間からもう真っ暗じゃん?」
空を指して言う雪に、わたしも空を見て頷いた。
まだ6時半だというのに、真夜中と同じくらい深い闇に染まっている。
「彩芽の家までそう遠くないし、心配だから送ってくよ」
雪はサラッとわたしと同じ方向に曲がり、そう言って笑ってみせた。
「え、そんな…、別に大丈夫だよ」
慌てて手を解こうとするけれど、強く固く繋がれた手はそう簡単には解けなかった。
「いいから、おれが送りたいんだから、送らせてよ」
そう言われてしまっては無理に解くこともできなくて、
「…、仕方ないなぁ…」
ため息混じりにそんなことを呟いて渋々手をつなぎ直した。
…なんて、ウソ。
本当は心の何処かで嬉しくて、少しでも1人にならずに済むことに安心していた。
真っ暗な1人の夜は、自然と泣いてしまいそうになる。