ハッピーエンドなんていらない



頬を掠める風が、ぞくりと背筋を凍らせるようだった。

タイツの上からハイソックスを履いたのに、それでもスースーとする。

この季節におしゃれをするのは間違いだったようだ。

だけどもちろん今更帰るなんてできなくて、気合を入れて集合場所まであるき出した。


そんなわたしに後ろから、

「おはよ」

ふわぁと眠そうにあくびをしながら、雪が声をかけてきた。


「ああ、おはよう、雪」

寒さに声も凍えて震える。


鞄にしまったプレゼントのことがバレないように、意識してしまうけど平静を装った。


雪はわたしの服装を見て少しキョトンとしてから、クスッと笑った。

「彩芽、気合入れてきたでしょ。すごい寒そう」

クスクスと笑っている雪に、思わず苦笑いをした。

「まあ、そりゃあ、ダブルデートですから」

しかも遊園地、と付け足すと、雪は確かにねと言ってまた笑った。

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