ハッピーエンドなんていらない
自分を可愛く見せたいし、周りの人にも不釣り合いだなんて言われたくなくて。
集合場所にはまだ誰もいなかった。
紫苑たちまだだねなんて話をしながら待っていた時だった。
ふわりと、白い何かがわたしの手に触れて消えた。
また一つ、ふわりふわりと空から舞い散ってくるそれに、目を輝かせた。
「…雪だ…」
まさかクリスマスに、それも恋人と2人きりのときに降ってくるなんて。
そんなロマンチックなことが現実にもあるんだななんて、心が踊った。
でも真っ先に、紫苑と2人きりでこの雪を見る湊を想像して胸を痛めるわたしは、やっぱり酷いやつだ。
「もう、こんな季節か…」
雪の言葉に、わたしはまた空を見上げた。
灰色の分厚い雲から、いくつもの白い雪が舞い落ちている。
空の雪と、隣にいる雪、なんだか混乱してしまいそうだ。
「もうすぐ、雪の誕生日だよね」
なんとなく問いかけると、雪はまあねと言って笑った。
「まあ、年明けて学校始まってからの話なんだけどね」