ハッピーエンドなんていらない
地元から電車でそう遠くもなく、話しているうちに遊園地の最寄り駅につく。
電車の中があまりにも暖かくて、駅を出た瞬間に身震いした。
息は白い。
ハァと吐かれた白い息が、冬の寒さを物語っていた。
寒いなんて言いながら、湊に抱きついて甘える紫苑を見た。
優しく紫苑の頭を撫でながら微笑む湊を見た。
2人は恋人同士なんだから、当たり前のことだと言い聞かせても、胸が苦しい。
だけど、ゆるりと自然に繋がれた手。
手袋越しでも伝わる温もりに救われた。
泣きそうになる前に、わたしの心を落ち着かせることができた。
「雪の手、あったかいね」
ふふっと笑うと、雪は不思議そうに首を傾げた。
「そう?手袋越しなのにわかる?」
不思議そうな雪に、うんと言って頷いた。
雪の手は温かくて、それに心が救われて。
…ああ、違う。
温かいのは雪の心だ。