ハッピーエンドなんていらない



紫苑みたいに可愛らしく笑うことはできない。

雪もわたしの笑顔を見て少し引いた顔をすると、

「無理に可愛らしく笑うなって」

そう言って、ぷぷっと笑った。


…うわっ、すごい傷付くんですけど…。

ガクリと肩を落とし、本の方に再度集中しようとする。

そんなわたしの隣に立ち、雪は本を覗き込んできた。


「文字ばっかだな、さすが。どんな内容の本読んでんの?」

興味津々な雪に、わたしは淡く笑いかけた。

「ホラー小説」

そう言ってふふっと笑うと、雪はスッと本から目をそらして自分の席に座った。

「よくそんなの読むよな。おれには無理」

ため息混じりに呟いた雪。

わたしはいつもクールなくせに怖がりな雪がおもしろくて、必死に笑いをこらえていた。

ふふっと思わず笑みをこぼす。

「やっぱり、自然と笑えよ。その方が可愛い」

ニコッと優しく笑いかける雪に、不意にそんなことを言われてドキッとした。


雪よりも湊にそんなこと言われたい、なんてわがままばかりが思い浮かぶ。


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