ハッピーエンドなんていらない



雪と手を繋いだままお化け屋敷を巡った。

真っ暗でそれが1番怖くて、正直驚かされてもそれどころじゃなかった。

雪は「わっ」と小さく驚いていたけれど、わたしも雪も叫ぶことはなかった。

ギュッと雪の手を握りしめているうちに出口についてしまって、外の明るさにホッとした。


そのあと、待ち合わせ場所を決めていたらしく、紫苑たちと合流した。


「あれ、彩芽、泣いた?」

ふと紫苑に尋ねられてドキッとする。

だから手洗い場に行きたかったのに、と雪の方を見ると、雪はチラッと先程のお化け屋敷のチケットを見せた。

「さっき、お化け屋敷行ってきたんだよ」

そしたら泣いちゃって、なんておどけながら話す雪に、紫苑も湊もなるほどと納得する。


…もしかして、かばってくれた…?


チラッと雪の方を見ると、雪はわたしを見てニコッと笑ってみせた。

何気なくかばってくれたことが嬉しくて、思わずドキッとした。


結局その後泣いたことをネタにされたけれど、雪のおかげでわたしの想いはバレずに済んだ。

ほんとうに雪には感謝してる。

そんな雪に、わたしの心は揺れていた。

< 124 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop