ハッピーエンドなんていらない
そう、実は今日は雪の誕生日なのである。
そうしてどこか行こうという話になり、雪の提案でカフェに行くことになった。
新作のカフェオレが飲みたかったらしい。
おしゃれなカフェで優雅にカフェオレを飲む雪を想像して、思わずクスッと笑った。
うん、雪にはそういうの、よく似合う。
しっかり服装を確認したあと、しっかりプレゼントを鞄にしまう。
そうして持ち物を確認してから、家を出ようとヒール付きのブーツを履いていたときだった。
「あれ、彩芽、出かけるの?」
キョトンとしながら兄がそう尋ねてきた。
わたしはニコリと笑って頷いた。
兄はわたしの服装を見て察したのかニヤッとすると、
「似合ってるから。楽しんでこいよ〜」
サラッとわたしのほしい言葉をおいてくれる。
…似合ってる、か。
「もちろん、楽しんでくるよ」
行く先はカフェだから楽しむ場所でもないのだけれど。
と心の中で突っ込み、兄に手を振ってから家を出た。
びゅうっと吹き抜けた風はやけに冷たくて、背中がヒヤッとした。