ハッピーエンドなんていらない
自然と手が繋がれて、思わずドキッと心臓の音が跳ねた。
当たり前になった、指を絡める恋人つなぎも、今日ばかりは少し緊張する。
雪の誕生日だから気合入ってますなんて、絶対に雪にバレませんように。
…バレたらなんか、恥ずかしいから。
冬の寒さとは正反対に、火照る頬を巻いてきたマフラーで隠しながら、そう思った。
カフェに向かう途中の赤信号で足止めをくらっていた時、雪はふと曇天の空を見上げた。
「…雪、降るかな」
ボソッと呟いた雪は、わたしの方を見て苦笑いをしていた。
「…、なんで?」
理由がわからず問いかけると、雪は恥ずかしそうに下を向いた。
…ああ、聞かれるのが恥ずかしくて呟いたことを後悔して苦笑いをしたのか。
雪は少し考えてから、また空を見上げた。
「雪が、降ってたんだって」
切なそうに目を細めて、灰色の空をじぃっと見つめた。
キョトンとしているわたしに、
「おれが生まれた日、雪が降ってたんだって」
雪はふっと笑いながらそう付け足した。