ハッピーエンドなんていらない
でも、雪でも言われて嬉しくないわけではなく、素直に言葉を受け取っておく。
「ありがとう。
じゃあ、自然に笑うためにこの本読んでくれる?」
栞を挟んだ本を手渡そうとすると、雪は意地でも受け取らない気らしく押し返してくる。
傍から見たらいつものクールな雪だけど、わたしから見れば必死でなんとも可愛らしい。
「どれだけ頼まれようと、絶対これだけは読まないからな!」
ムッとして睨むようにわたしを見る雪。
思わずクスクスと笑い出してしまう。
雪はムスッとしていたけれど、わたしが笑ったのを見て同じように笑い出した。
「他のホラー小説がいい?」
「ホラー小説が嫌だ!友情系なら読むけど」
そう言い合って、なんだかおかしくなって笑う。
「じゃあ、おれがホラー読む!」
突然現れてぴょんぴょんと跳ねる湊。
「湊もホラー苦手でしょうが」
紫苑が呆れ顔でそう突っ込む。
睨むように紫苑を見る湊に、おかしくて思い切り笑う。
軽く笑い飛ばせるような幼馴染という関係が心地よい。
それと同時に、なんだか虚しい。