ハッピーエンドなんていらない
今日の予報はただの曇りだ。
わたしも同じように空を見上げてから、携帯で見た予報を思い出した。
降水確率は40%と高かったけれど、あくまで降水確率だから雪が降るとは限らない。
でも、
「…だから、名前が雪になったの?」
もし、雪の名前と関係があると言うなら、降ってほしいかもしれない。
せっかくの、誕生日なんだから。
信号が変わって、歩き出した雪に手を引かれてわたしも足を進める。
「なんかね、予定日が冬だって分かった時点で、候補にはあったらしいよ。
他にも候補はあったんだけど、出産当日に雪が降ったから何かの縁かと思って、雪って名前付けたんだって」
クスッと笑った雪に合わせて、わたしもニコリと笑みを浮かべる。
「よく、知ってるね」
人混みの中、離れないように引き離されないように手に力を込めた。
すると雪も、同じくらいの力で握り返してくれる。
「あれ、4年生の二分の一成人式の時に、お母さんからめっちゃ詳しく教えてもらったんだ」
「あー、あったね、そんなの」
まだ、わたしが湊を好きになりかけていた頃の話だ。
だから、雪のこともよく見ていたわけで。
そういえば、名前の由来を聞いてくるって話もあったっけ。