ハッピーエンドなんていらない
まるでバカップルみたいだなと心の中で笑った。
雪は困った笑顔のまま、食べていたものを飲み込むと、
「甘酸っぱい」
と言ってカフェオレを流し込んだ。
「もしかして、ミカン嫌い?」
「んー、嫌いじゃないけど、アイスと並ぶとすごい酸っぱく感じる」
嫌いじゃないことにホッとしながら、雪の発言にそうだねと共感する。
まあだから、アイスや生クリーム、その他のフルーツの甘さが引き立つんだけど。
わたしはふふっと笑いながら、鞄の方に目をやった。
先程からタイミングを伺っているのだが、そろそろ渡すタイミングだろう。
プレゼントは雪の欲しがっていたイヤホンと、剣道のストラップだ。
喜んでくれるかなとドキドキしながら、ちらっと雪を見た。
「あのさ、雪、改めて、お誕生日おめでとう」
改めて言うのはなんか照れる。
ありがとうと微笑む雪を見ながら、わたしは鞄の中にあったそれを取り出した。