ハッピーエンドなんていらない
食べるものも食べて、飲むものも飲んで、長居するのも悪いし帰るかと席を立つ。
伝票をこっそり見たから、もうお金は半分用意していた。
…って、半分、じゃなくて。
「雪、今日はわたしが奢るよ」
パッと先に伝票を取ると、雪は驚いた顔をしたあと、困ったように笑う。
「いやいや、ここはかっこよくおれに払わせてよ」
わたしから伝票を奪おうとするけれど、わたしはサッと雪の手を避けて渡さない。
「今日は、雪の誕生日なんだから。
それか、ここ割り勘にするから映画のチケット代、教えてよ」
そう、先程から雪はわたしにお金を払わせないためか、映画のチケット代を教えてくれないのだ。
男がかっこよく払うのが当然、みたいなのが、なんだか嫌だった。
「んー、あんな豪華な誕生日プレゼントもらって、割り勘はな…」
その言葉に、ピクリと眉を動かした。
そうしてジッと雪を見据えると、わたしはそっと口を開く。
「あのね、プレゼントはわたしの気持ちで、わたしからの一方的なものなの。
だから、それに対するお礼なんてものいらないし、わたしは望んでない」