ハッピーエンドなんていらない
だからわたしが払うのと、伝票を持っていると、雪はクスッと笑った。
仕方ないなと言いたげだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて奢ってもらおうかな」
ごちそうさまと付け足した雪に、わたしはそれでよしと微笑んだ。
手を繋いで街中を歩く。
特に他に用事もないし、寒いからどこかへ行くか帰るか。
適当に歩きながら雪とどうするか話していたときだった。
「…っ、雪、降ってきた…」
冷たいものが頬にあたって、わたしはそう呟いた。
わたしの声に雪もパッと空を見上げる。
細かくて、少ないけれど、ふわふわと雪が空から舞い降りてくる。
「ほんとだ、すごいナイスタイミング」
2人で顔を合わせてふふっと笑うと、それから指を絡めて歩き始めた。
寒いけれど、別に、このまま歩いているだけでもいいかもしれない。
なんて、やっぱり寒いのは苦手だから口にはしないけれど。
大切な人の誕生日、偶然にも降ってきた雪を、もう少し見ていたいとは思った。