ハッピーエンドなんていらない
教室はまだ施錠されておらず、普通に開いていた。
中にはとある机にぽつんと鞄が置かれていて、誰かが使用していることが分かる。
今はいないみたいだし、お手洗いにでも行ったのだろう。
わたしは何も気にせず、綺麗とは言えない黒板の前に立って、黒板消しへと伸ばした手を止めた。
視界の端にチラリとうつり込んだ文字。
見間違いではないかと確認するが、確かにそれは見間違いなどではなかった。
近付いてみて、マジマジと見る。
一語一句、見間違いがないようにしっかりと見ていく。
それは黒板の隅の方だった。
小さな字、といってもチョークで書くためそこまで小さくもないが、そんな字で文が書かれていた。
それはちょうどわたしが湊への想いを書いた場所とほとんど一緒の位置。
誰かが、わたしと同じように、隠し切れない好きな人への想いを書いた。
…それだけなら、良かったのだろうが。
わたしが気になっているのは、その直前の一文だった。