ハッピーエンドなんていらない
なるほど、と納得しているわたしに、紫苑が近付いてくる。
けれどその視線の先にあるのはわたしではなく、黒板の文字だった。
わたしが眺めていたことを知っていながら、その文字が見えているはずなのに動じることない。
そりゃそうでしょ、と笑うことも、“私”が誰であるのかをわたしに尋ねることもしない。
何かを見透かしているような、そんな目でジッと黒板を見つめている。
「その文が、気になるの?」
尋ねたいのはわたしなのに、紫苑がそう問うてきた。
わたしは少し驚きながらも、コクコクと頷いた。
本当に雪はわたしのことが好きなのだろうか。
そう思う根拠は何なのか。
そう思う根拠がわたしが雪と付き合ってるからじゃなかったら。
本当に雪がわたしのことを好きならば、わたしは、嬉しい。
だから、とても気になるのだ。