ハッピーエンドなんていらない



クリスマスの日、雪はボソッと紫苑が好きだと呟いた。


「ひどいよね、わたしが雪のこと好きなのを知らないで。

まあ、わたしが雪を好きだなんて知らないからだし、そんな嘘をついたのもわたしが唆したからなんだけど」


教室にオレンジ色が差し込んできた。

そろそろ日が暮れてしまうのだろう。


紫苑の横顔が照らされて、その表情がくっきりと悲しみを映し出した。


わたしは湊が好きで、湊は紫苑が好きで、紫苑は雪が好きで、雪はわたしが好きで…。

わたしたちは結局、幸せになれない関係にされていて。

でもその中でわたしが、雪のことを好きになりかけていて。


でもそれは、紫苑が自分の幸せを犠牲にして雪の背中を押したから。

でもそうしたら、湊の幸せは?


…わたしたちはどうしたら、ハッピーエンドを迎えられるのだろう。


いろいろな思考が駆け巡る。


「わたしは、雪にただ幸せになってもらいたかった、それだけなの」

ゆるりと上げられた口角。

ただただぺたりと貼り付けられただけの笑み。

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