ハッピーエンドなんていらない
わたしは、湊と紫苑を悲しませたくなくて必死に想いを隠してきた。
それと同じように、紫苑は雪の幸せを願って雪の背中を押す行動に出た。
それが、たとえわたしを一度傷付けることになっても、わたしが泣くことになっても。
「彩芽を幸せにできるのが雪であるような気がしたのもあった。
湊じゃあ、彩芽は幸せになれないだろうな、なんて考えていたのもあった。
けれど、正直言っちゃうと、わたしは彩芽より雪の幸せをとったから」
ごめんねと、震える声で呟かれる。
そんな声でそう言われてしまってはもう何も言えなくなってしまう。
いいよなんて、簡単に言えやしない。
だって、紫苑は、親友であるわたしではなくて雪をとったのだから。
結果的にわたしも幸せになれたとしても、初めに雪の幸せをとったことには変わりない。
それでも、紫苑が好きな人と付き合うことじゃなくて、好きな人の“幸せ”を願ったから憎めない。
好きな人が好きなわたしに、敵意を向けないから憎めない。
わたしなんか、紫苑にたくさん嫉妬したのに。
紫苑に勝手に劣等感を抱いて、敵対心を少なからず抱いていたのに。