ハッピーエンドなんていらない



「わたし、雪のこと、好きかもしれない」

ふと、何気なく伝えた想い。

今まで隠すことしかできなかったものを、ぽろりとこぼした。

紫苑は少し驚いてから、安心したような笑みを浮かべて「そっか」と言った。


やっぱり、わたしは紫苑にかなわないよ。


紫苑にとって、わたしはライバルになるんだよ。

紫苑の好きな人が、別の人と幸せになるかもしれないんだよ。

それなのにどうしてそんなに安心できるの。

どうしてそんな穏やかに笑えるの。


わたしは、結局なんだかんだ、湊のことばかりで、湊を好きな気持ちを優先していたのに。

2人を悲しませたくなくて、湊の側を離れたくなくて、嫉妬ばかりで。

いつも紫苑とわたしを比べて、ああわたしって可愛くないなんて劣等感を抱いて。


「ねえ、紫苑は、悔しくないの?」

わたしの言葉に、紫苑の眉がぴくりと反応した。


「はっきり言って?」

こてんと髪を揺らしながら首を傾げる紫苑を、

「はっきり言って」

ジッと強い瞳で見つめた。


わたしの視線にふにゃりと笑った紫苑は、

「悔しいよ、そりゃあ」

えへへと笑いながら、サラッとそう言った。

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