ハッピーエンドなんていらない



なんとか文字が消えたことに満足して、それぞれの荷物を準備し始めた。

そこで紫苑がそういえばとはっとしたような顔をしてわたしを見た。


「さっきの話のこと、2人には秘密ね」


悲願するような目でそう言われてしまって、断ることはできなかった。

仕方なく頷いてはみたけれど、本当に雪がわたしのことを好きなのかは気になる。


…約束、破るかも。


心の中で紫苑に軽く謝り、テキパキと帰る準備をした。

やがて準備をし終わる頃に、タイミングよく2人が教室の扉を開けた。


「ほら、やっぱりここにいただろ?」

「すげえ、雪、エスパーかよ」

楽しそうに笑い合いながら教室に入ってくる2人。


どうやらわたしたちの居場所を、雪がピタリと言い当てたらしい。


「じゃあ、帰ろうか」

仕切った湊に、わたしたちは教室をあとにする。


ふと目があって、唇に人差し指をあてがった紫苑に、約束を破る罪悪感からか目をそらしてしまった。

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