ハッピーエンドなんていらない
2.
電車に乗る前は少しだけ街に注いでいたオレンジの光も、電車を降りる頃には藍に消えていた。
すっかり暗くなってしまった通りを、外灯の小さな光が照らしていた。
コツコツとローファーの踵が歩くたびそこらに音を響かせた。
手は繋がれたまま、ほんの少し間が空いてしまっているわたしたちに比べ、紫苑と湊はとても楽しそうに話している。
2人だけの世界に染まってしまって、わたきたちは置いてけぼりだ。
まったく、紫苑にあんなことを言われてしまって、雪ともうまく話せない。
雪がわたしをずっと好きだったなんて言うから、変に意識してしまう。
今では当たり前のように恋人繋をされて嬉しいくせに、まるで嫌がってるみたいだ。
それに、さっきから雪が気を遣っているのがひしひしと伝わってくる。
嫌がっているみたいだから、あえて何も話さないでいるようだ。
「じゃあ、また明日ね」
ひらひらと手を振る紫苑。
軽く「じゃあな」と言ってすぐに背を向けた湊。
2人きりになってしまって、さきほどよりも格段に気まずくなった。