ハッピーエンドなんていらない
雪はその質問に少しだけ唸り声を出して悩んでいた。
なにやら言いにくそうな顔をしながら、「あのな」と話を切り出す。
「紫苑が好きだっていうもの、完璧な嘘というわけではないんだ」
雪の思わぬ発言に、驚いて目を見開いた。
「どういうこと?」
気になって首を傾げてみると、雪は困ったようにして頭をかいた。
それからその手を降ろして、もう片方はまだわたしと繋いだまま、じっとわたしを見た。
「ほんの一時期、紫苑に想いが傾きかけたことがあったんだ」
鈍器で殴られたような衝動がして、一瞬目がチカチカとした。
…ああでも、その頃雪を好きではなかったわたしに、ショックを受ける権利はないか。
わたしは「そうなんだ」とだけ答えた。
その他に言う言葉が思いつかなかったというものある。
「実は、紫苑にも好きな人がいて、その人にもまた好きな人がいるんだって聞いて。
それからしばらくお互いの話をしてて、それもあって、傾きかけた」