ハッピーエンドなんていらない



…その好きな人は雪なんだよ。

紫苑の顔を思い出して、心の中でそう呟いた。


でもきっと雪はそんなことを知らないから、たんに紫苑にも好きな人がいる、くらいにしか思っていないだろう。

それが自分だなんて、考えもしないだろう。


「でも、彩芽と湊が仲良くするの見てたら苦しくて、やっぱ彩芽が好きだなって、思って」

サラッとこぼれた雪の言葉と、懐かしむように思い出している雪の顔にドキッとした。

ドクドクと高鳴る心臓が、雪のことを好きなのかもと思わせる。


…好きなのかもじゃなくて、好きなのかな。


「その、騙しててごめんな」

申し訳なさそうに眉を下げる雪。


そんな、謝ってほしいだなんて思っていない。

ただ、わたしが少し気になったから聞いてみただけで、謝る必要はない。

そう、伝えたくても言葉は出てこなくって。


「ううん、大丈夫」

そう伝えて、曖昧に笑うことしかできなかった。

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