ハッピーエンドなんていらない



それに対してへらへらと楽しそうに笑う紫苑と湊。


そんな日々がしばらく続いたある日のことだった。


「雪の馬鹿!迎えに来るっていいながら寝坊しないでよ!」

「だからごめんって言ってるじゃん!」

気まずさとかなり取り除けて、朝雪が迎えに来てくれると言った翌日だった。

早速雪が寝坊をしたらしく、迎えに来たのは紫苑たちとの集合時刻。


家から集合場所までは5分くらいだし、電車の時間まで余裕があるから少しくらいはいいけれど。

だけど迎えに来るなんて言うから、雪と言った時間に待っていたのに、来ないからとてもヒヤヒヤした。


駆け足で集合場所へと向かう途中、雪がさり気なく手を繋いだ。

足の遅いわたしを引っ張るためだろう。

その前までは寝坊したことに散々文句を言っていたけれど、まあ、いいかなと思ってしまった。


そうして集合場所についたのはいいが、湊の姿はなく、紫苑が呆然と立ち尽くしているだけだった。


「…紫苑、湊は?」

向こうを向いたままの紫苑に声をかける。


紫苑は少し肩を震わせてから、恐る恐るこちらを向いた。

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