ハッピーエンドなんていらない
紫苑はわたしの質問に首を傾げた。
何を今更と言いたそうに口を開いて、一度閉じた。
それはきっと迷い。
雪が好きかもと言ったわたしに対して雪を好きだと言うことへの迷いと、本当に雪を好きなのかという無意識の迷い。
「…わたしは、雪が好きだよ」
その雪が目の前にいるのに、苦しそうに微笑んで雪を見ていない。
遠い目で、誰か他の人を見ているようだった。
目は、紫苑の目は、雪じゃない誰かを好きだといっているようだった。
「きっと、違うよ」
はっきりと、断言するように呟いた。
紫苑は何を言ってるのと言いたそうに目を見開いてわたしを見た。
紫苑からしたら、わたしは紫苑の想いを否定したのだ。
心底驚いているのは紫苑だけでなく、雪も驚いているようだった。
話についていけてないのか、キョトンとしながらわたしと紫苑を見ていた。
「ねえ、紫苑、そうして泣くのは湊が好きだからじゃあないの?」
わたしが素直に思ったことを、伝える。