ハッピーエンドなんていらない
「いつからなんて、そんなのいいじゃん」
気にしなくたって、いいじゃん。
そう付け足すと、紫苑はぱちぱちとわたしを見てから微笑んだ。
いつもよりも少しだけ乱れた呼吸を整えながら。
「そうだね、うん、湊に伝えなきゃ」
くるりとわたしに背を向けて、紫苑が歩き始める。
だいぶ話し込んでしまっていた。
いつも余裕を持って登校しているが、今から行くとだいぶギリギリになってしまう。
きっと湊はもうとっくに電車に乗り、学校の最寄り駅のあたりまで行ってしまってるはずだ。
湊に追いつくことは不可能だが、早く学校に行って昼放課などに話すことはできる。
走れば朝、少しだけ話す時間があるかもしれない。
大股で急いであるき始めた紫苑の後ろを、今日は手を繋がずに雪と追いかけた。
だけどほんの少しして、紫苑がパッと壁に手をついた。
壁に手をつく直前、ユラリと揺れた紫苑の体。
足元がふらついているようだ。