ハッピーエンドなんていらない



壁をつたいながらおぼつかない足取りで歩き始める紫苑。

はじめはずっと立ちっぱなしだったから疲れたのかと思った。

しかし異様な雰囲気に、わたしと雪は慌てて紫苑に駆け寄った。


「紫苑、大丈夫?」

そっと声をかけると、紫苑は力なく微笑んだ。


「大丈夫」

ふにゃりと笑った紫苑の頬はいつもよりも赤く、ふと紫苑の額に触れた。


自分の手が冷たいと感じるほどの熱が、紫苑の額から伝わってくる。


「熱、あるじゃん」


…もしかして、話している間から本当はダルくて熱があったのでは。


わたしの言葉にピクリと小さく肩を震わせた紫苑は、またえへへと笑ってみせる。

「起きたときから熱っぽかったけど、気のせいかなと…」

気のせいじゃなかったかぁとのんきに笑う紫苑に、わたしと雪はすっかり慌てていた。

紫苑を今すぐ家に帰すべきだろうけど、紫苑が拒みそうたのだ。

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