ハッピーエンドなんていらない
1.
翌日のことだった。
紫苑が早退した日、湊はわたしたちに何も告げず先に帰ってしまったらしい。
帰ったかどうかはすぐ分かるし、告げる必要などないと判断したのだろう。
来ないことに心配したわたしを気遣い、雪が学校中を探し回った。
その結果、残っていたサッカー部の人から帰ったことを知らされたのだ。
ただでさえ部活で疲れていたというのに、走り回りヘトヘトな雪を見て申し訳なく思った。
まあもちろん、それについて講義すべく、雪と約束をして少し早めに家を出た。
今日ばかりは雪も遅れることなく、時間きっちりに来てくれた。
昨日の今日で遅刻されてはたまったものではない。
ただ、本音を言えば…。
「雪、今日も遅れてくるんじゃないかと思った」
「失礼な」
思ったことを素直に言うと、雪はムスッと頬を膨らます。
それに思わずクスッと笑ってから、集合場所を目指して少し早歩きで向かった。