ハッピーエンドなんていらない



同じクラスだしいくらでも話すタイミングはあるはずだ。

当たり前のように繋がれた右手に、雪の熱を感じながら考えていた。


そう、甘く考えていた。


学校に手を繋ぎながら入ったせいか、正門に立つ生徒指導の先生にまでからかわれてしまった。

雪は困った笑みを浮かべていたけど、わたしは実は嬉しかったりして。


教室に入ってそれぞれの席に、といっても隣の席だが、荷物をおいて準備をする。

ふと湊の席の方に目をやったが、そこに湊の姿はなかった。

不思議に思って教室中を見渡すが、湊の姿はどこにもなかった。


まるでわたしたちを避けているようで、教室に帰ってきたのは放課が終わる直前だった。

話すにも時間がなくて、これじゃあ話せない。


結局その日、湊と話すことは叶わないまま、放課後を迎えた。

放課後、湊はわたしたちには目もくれず、さっさと部活に行ってしまった。


雪も部活があるため、わたし1人で紫苑のお見舞いに行くことになった。

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