ハッピーエンドなんていらない
多分、伝えようと思った矢先にこんなことになって、辛いだろうな。
「帰って」
はっきりと言い放たれた紫苑の言葉が突き刺さるようだ。
わたしは目を見開いて、それからギュッと拳を握りしめた。
お見舞いの品を床頭台の上に置いて、改めて紫苑のほうを見る。
「帰らない」
一切引く気がないわたしに、紫苑はバッとこっちを向いた。
「…今は、彩芽の顔見たくないから…」
お願いだからと悲願する紫苑に、ズキッと胸が痛む。
だけど、引く気にはなれなかった。
…きっと今の紫苑は、湊に想いを伝える意志を失いかけている。
このままじゃあ、紫苑と湊との間にこのまま溝ができたままだ。
「…わたしの顔、見たくないなら見なくていいから、話を聞いて」
お願いだからと、紫苑と同じ言葉を、ずっと力強くそう言った。