ハッピーエンドなんていらない
紫苑はそれっきり黙って、布団の端をギュッと掴んだ。
多分それは、話してもいいという合図だろう。
「やっぱり湊に想いを伝えるのやめるなんて、言わないよね」
ビクリと紫苑の肩が震えた。
何も言わないまま、紫苑は自分の肩を抱きかかえていた。
わたしはそんな紫苑をジッと見つめながら、答えを待った。
「…だって、もう、伝わらないもん」
小さく呟いた声は震えていて、今にも泣き出しそうだった。
なんだか紫苑を責めているみたいで胸が痛むのを感じながら、わたしはギュッと拳を握りしめた。
…伝わならなく、ないから。
「ねえ、紫苑、わたしは、湊と付き合っていた紫苑とわたしを比べてたよ。
どうしてわたしじゃないんだろうって、わたしのことばかり考えてた。
湊と紫苑のために忘れなきゃって頭ではわかっているくせに、自分が大事で忘れられなかった」
そっと、言葉を紡いでいく。
あの頃を思い出して泣きそうになるも、涙を必死にこらえた。