ハッピーエンドなんていらない
でも泣いちゃいけないと、一生懸命に涙をこらえる。
「わたしは、紫苑に対して劣等感ばかり抱いていた。
紫苑みたいに、好きな人の幸せを真っ先に祈れるような人じゃない。
紫苑のことね、すごく憧れてるの。
わたしは紫苑みたいに、誰かのために自分を犠牲にすることはできないよ」
「…なにが、言いたいの?」
わたしの話を遮って、震える声で問いかけてくる紫苑に、ふと微笑む。
口元が緩むとそれだけで、涙がこぼれそうになる。
ギュッと拳を握りしめて、わたしはこちらを向かない紫苑を見据えた。
「紫苑の幸せを、祈ってる人がいるんだよ。
紫苑が誰かの幸せばかり願ってても、紫苑は幸せにはなれないんだよ。
そのままだと、紫苑の幸せを願う人まで、幸せになれないままだよ」
話が、なかなかまとまらない。
それでもわたしは、
「伝わらなくたって、伝えるだけ伝えればいいんだよ」
構わずそう続けた。