ハッピーエンドなんていらない



湊に伝えるのを諦めないでほしいのが本音である。

紫苑には、雪にそうしたように、わたしにそうしたように、幸せになってほしい。

もっと、自分の幸せにワガママになってほしい。


…本当は、わたしには叶わなかった湊の隣にいる権利を、簡単に手放してほしくない。

なんて、やっぱりわたしは自分のことばかり考えてて。


「…紫苑は、わたしの憧れだよ」


そっとこぼした言葉に、紫苑の指がピクッと反応した。

表情は見えないけれど、きっと見えても紫苑がどんな感情を抱えてるか分からないだろう。

そんな、複雑な表情をしているだろう。

わたしも、紫苑も、きっと。


「やめてよ、そんな、わたしのどこに憧れるって言うの…?」

悲しそうに震える声が、言葉を紡いでいく。

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